定期試験と受験の関係(中学編)
更新日:2022年5月21日
こんにちはOne Bridge アカデミーです。
今回は禁断のテーマ、定期試験について述べたいと思います。
このテーマを取り上げたのは、定期試験の結果が、ご父母の方々の関心の中心であるためです。
今まで何度も定期試験への取り組み方についてご質問をいただいています。
ではなぜ禁断のテーマなのか。
それはこのテーマに欺瞞が公然と存在しているからです。
ご父母の方々が子どもの成績を知る数少ない手段の一つであり、そして通っている学校が実施しているということで信頼をおいている試験が定期試験です。
"定期試験で優秀な成績を収めているから安心だ"
"成績が振るっていないので不安だ"
そのように思われるご父母の方々は多いのではないでしょうか。
では本当にそう考えてよいのでしょうか。
その答えは中学生か高校生かによって変わりますので、大きく分けて説明することにします。
今回は中学編です。
説明する上で、まず大前提として定期試験の性質について述べます。
定期試験には
1.出題範囲の大部分が学期内で学習する範囲に限られている
2.標準レベル以下の問題が多く出題される
3.試験結果が評定に影響する
このような性質があります。
例外的な定期試験を実施する学校もありますが、今回は一般的な定期試験について述べますので、以下はこれを前提とします。
今回、定期試験の重要度を1~5の5段階で評価しました。
数字が大きいほど重要度も高いと考えて下さい。
別記事で高校編を扱いますが、この数字は高校編と同じ尺度です。
もちろん科目や時期、志望校によって重要度は変動してしまいますが、目安として記載しています。
また試験である以上、デキないよりはデキたほうがいいのは当然です。
重要度が低いからといって、「デキなくていい」と言っているわけではありませんのでご注意下さい。
~中学生にとっての定期試験~
対象・・・公立中に通う人(難関校志望)
重要度・・・3
対象・・・公立中に通う人(非難関校志望)
重要度・・・4
対象・・・中高一貫校に通う人
重要度・・・2
埼玉県では中1~中3の2学期までの「学習の記録」「特別活動等の記録」「その他の項目」が点数化され、高校入試に利用されます。
このうち定期試験の得点は「学習の記録」に大きく影響します。
通常、内申点といった場合にはこの「学習の記録」を指し、「学習の記録」「特別活動等の記録」「その他の項目」すべてを得点化し、合計したものを調査書点と呼びます。
今回は定期試験について述べますので、内申点=定期試験と考えて下さい。
内申点の計算方法は、受験高校別に中1、中2、中3それぞれの内申点を1:1:2、あるいは1:1:3などで比重をかけます。
この比重を元に中1~中3の内申を合算し、さらに当日の試験点と6:4あるいは7:3などの比率で比重をかけて合算します。
ちょっと具体的に計算してみましょう。
中1の内申点:35/45
中2の内申点:35/45
中3の内申点:40/45
の場合です。
志望校の採用比率は
第一段階選抜が当日点:調査書点=6:4
と仮定します。
当日の公立入試は各教科100点、計500点で固定です。
第一段階選抜の6:4という比率から、
当日点=500点
調査書点=334点
が合否判定のための配点となります。
では調査書点を計算しましょう。
1:1:2採用校であれば、学習の記録は
35点×1+35点×1+40点×2=150点/180点
ここに、「特別活動等の記録」「その他の項目」それぞれの得点を加えます。
調査書点における「特別活動等の記録」「その他の項目」の割合は学校によって異なりますので、仮に
「特別活動等の記録」が50点/70点
「その他の項目」が50点/70点
とします。
この場合、調査書点は250点/320点です。
調査書点の満点は334点ですので334/320、つまり約1.04倍します。
算出された調査書点は、250点×1.04により、260点/334点。
当日試験前にこれを持ちスコアとして入試を受けることになります。
この260点に、当日点を加えた結果が総得点です。
以上が埼玉県の公立入試ですが...どうでしょうか。
分かりにくいですね。
さらに「特別活動等の記録」「その他の項目」については公開されていない情報もあり、その全容の把握は不可能です。
さらにさらに複雑なことに、当日点と調査書点の比率も、第1段階選抜と第2段階選抜で異なり、高校はそれぞれから合格者を出します。
つまり調査書点か当日点か、そのどちらかが突出している人が受かりやすく、どちらも中途半端だと不利になるということです。
このように公立高校入試は複雑ですので一概に内申点(定期試験)の重要度は述べられませんが、各学年と調査書点の比重で分けて、合否判定における内申点の割合を表にしてみました。
上の表が、選考全体における内申点の割合をパーセント表示したものです。
これは調査書の一部である「学習の記録」についての割合です。
「特別活動等の記録」「その他の項目」を考慮していませんので、あくまでも目安として考えて下さい。
上の表のように、内申点が選考のうちでどれだけの割合を占めるかは高校によって異なります。
しかし概ね偏差値が高い高校ほど内申点よりも試験当日の試験結果が重視されます。
したがって、難関校以外の高校を目指す人にとっては定期試験の結果は非常に重要です。
難関校を目指す人にとっては、偏差値と反比例的に重要度が下がります。
参考として、一次・二次選抜における内申点割合のグラフを載せます。
全体的に偏差値が高くなるにつれて内申点の割合が下がっていることが確認できます。
補足として、以上の内容はあくまでも公表されている選考方法です。
実態としては、上位校の中でも特に県立御三家レベルにもなると"内申点はほとんど見られていないんじゃないか"と噂されたりしています。
この噂が本当かは分かりませんが、このレベルの高校だと内申点はほとんどオール5に近い状態の子が多く受験します。
ですから内申点の差はほとんど生まれません。
また7:3採用高校の場合、仮に中3時にオール4で内申点36の子とオール5で内申点45の子であっても、その差は3パーセント程度の差に収まります。
これは当日の試験のデキ具合で十分逆転することができる差ですので、このように噂されているのかもしれませんね。
ここまで公立高校受験について述べてきましたが、私立高校の受験でも内申点は重要です。
一定の内申点が推薦資格になっており、特に単願の場合は内申点だけでほぼ合否が決まることもあります。
それぐらい私立高校の受験において内申点は重要です。
しかし私立においても公立と同様に、偏差値が高い高校ほど内申点を重視しなくなります。
学校の定期試験を元にする内申点よりも、模試のスコアを重視するのです。
トップレベルの高校にもなると、当日の試験点のみで合否を判断する高校もあります。
個人的な意見ですが、私としては全ての学校が模試のスコア、あるいは当日点を重視して欲しいと思っています。
それは学校の先生がつける評定が公平だと言い切ることが難しいからです。
あらゆる選考、特に公教育においては公平性がその前提にあると思います。
学校が違えば定期試験の問題も、比較対象となる生徒も違います。
ですから学校での評定を第一の評価基準とすることはどうかと思うのです。
とはいえ制度を利用する人に対して何ら思うところはありませんし、むしろ積極的に自分が有利になるように受験をするのが良いと思っていますが、制度全体を一律に見直すのであれば私は賛成です。
さて、最後に中高一貫校に通う人にとっての定期試験です。
中高一貫校の場合、定期試験の結果は一部の例外を除いて進路に直接関係しません。
ですので重要度も高くありません。
しかし中高一貫校ではレベル別にクラスが設置されていることが多く、所属クラスの選定に定期試験の結果が利用される場合があります。
また中高一貫校に入学すると、大学受験までの6年間受験の必要がなく、中だるみが生じます。
この中だるみが長期化すると大変なことになります。
私はこの目で何人もそうなってしまった同級生を見てきました。
こういったことから中高一貫校に通う場合でも、中だるみをしていないか、どのクラスに所属するかの判断材料になる、という点から定期試験には一定の重要性があります。
中学の間は模試などもあまり無いので、勉強をしているかどうかの指標が定期試験ぐらいに限られてしまうという事情もあります。
とはいえ受験に使われないスコアですので、公立中に通う中学生よりも重要度は当然落ちます。
"私立中で成績が悪い人は深海魚って言われてるんでしょ?"
"中学で遅れると高校でもそうなる"
そういうことを言う人もいるでしょう。
しかしそういった意見は、中学と高校の学習内容の差や、高校の3年間という期間を軽視しすぎです。
ハッキリ言って中学の定期試験程度の問題の正答率は、その子の現在及び将来の学力を表していません。
同じ学校の中でなら、やれば解けるし、やらなければ解けない問題が出題されているからです。
「成績が良い→頭がよい」ではなく、
「成績が良い→勉強をした」
「成績が悪い→頭が悪い」ではなく、
「成績が悪い→勉強をしていない」
ということなんですね。
勉強をしているのに成績が悪いという人もいますが、その場合は勉強の仕方を間違えている場合がほとんどです。
どのように勉強をすればいいのか信頼できる人にアドバイスを求め、その通りにやってみましょう。
定期試験の悪い結果から分かることは、
「定期試験の成績が悪いから頭が悪く、大学受験が難しい」
ではなく、
「単に勉強をしていないから成績が悪い」
ということです。
定期試験の良い結果から分かることは、
「定期試験の成績がよいから頭がよく、大学受験ができる」
ではなく、
「単に試験範囲の勉強をしたから成績がよい」
ということです。
ただ中学の時にできた差も、差は差ですので出遅れた場合はもちろん追いつくために相応の努力が必要です。
しかしそれは高校3年間で十分取り戻せる程度の差に過ぎません。
ですから中学の定期試験で良い成績を収めることは、大学受験で成功を収めるための必須条件ではないのです。
つまるところ、中高一貫校に通う中学生にとっての定期試験は、
「デキるに越したことはないが、デキているからといって大学受験も安心とは限らない」
「デキていないのはよくないが、デキていないからといって大学受験が無理とは限らない」
という微妙な立ち位置の試験です。
そんな試験の結果に一喜一憂しても仕方ないと思います。
中高一貫校生にとっては結果よりも過程、例えば勉強以外でも
やると決めたことをキチンとやれているか
物事に取り組む際は、集中して取り組めているか
様々なことに関心を持てているか
物事を多面的・批判的に捉えることはできているか
そういった姿勢の部分を重視するべきだと思います。
今回は以上となります。
まとめると、
高校受験を控えている中学生にとって定期試験は重要。
しかし志望校が難関であるほど重要性は下がる(内申は良くて当たり前、という意味でもあります)。
中高一貫校の中学生にとって定期試験は受験上の決定的な判断基準ではない。
とはいえ定期試験の勉強もやっていた方がお得。
そんなところです。
ところで今回の記事では、定期試験がなぜ禁断のテーマなのかついては説明していません。
そのワケについては次項の高校編に譲りたいと思います。
それでは失礼します。
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