2020年度埼玉県公立入試講評(数学)
更新日:2022年5月21日
こんにちはOne Bridge アカデミーです。
前年に引き続き、2020年度の埼玉県公立入試の問題レビューをしたいと思います。
問題から今後の学習のポイントをおさえましょう。
今回は数学です。
大問ごとに大雑把な目安としての難易度を記載しています。
易<やや易<標準<やや難<難の順で難しいです。
-全体講評-
ここ数年、埼玉県の公立入試はよい試験になっていっていると私は思います。
試験の良し悪しの基準は色々ありますが、「学力が点数差となって現れるか否か」という観点が最大の基準であることは、選抜試験の存在意義から明らかだと思います。
その観点に立つとき、まず英数の試験を2つに分割したことは大正解だと思います。
試験分割前は簡単すぎる問題と難しすぎる問題とで大きく別れてしまっていて、ほとんどの人が解ける問題と、ほとんどの人が解けない問題によって試験が大部分構成されてしまっていました。偏差値50~60前後の人の学力差を測る問題が少なかったので、大多数の人が受験する公立入試の試験としては疑問の多い試験でした。
そのため多少の学力差は点数差となって表れにくく、簡単な問題を如何にミスしないかという、選抜試験とは別の競技になってしまっていました。
それが試験の分割によって、適切なレベル帯での学力差が測れるようになったわけです。
学力が高い人にとっては簡単すぎる問題が排除され、学力が低い人にとっては難しすぎる問題が排除されたということです。
同レベル帯での実力を測る試験となり、加えて問題の構成自体も年々、実力差が表れやすい問題になっていっていると思います。
去年も書きましたが、数学をミスしない程度に絞って勉強して最大限のコスパを得る(つまり時間対効果を最大化する)ような、良く言えば戦略的、悪く言えばずる賢い勉強は不利にはたらく試験へとなりました。
全単元、基礎から中学の学習内容をしっかりと学習する必要のある試験です。
来年、公立高校入試を受ける皆さんはそのことを忘れないで欲しいと思います。
-学力検査問題-
大問1 難易度:易
なんと配点65点です。
驚愕の数値です。
今年、学力検査問題の狙いが明確に示された配点だと思います。
この大問だけで合同証明・相似・円以外のほとんど全ての単元の基礎を網羅していますので、中学数学の基礎の部分を習得できていますか、と問われています。
注目は(11)(16)です。
(11)は空間図形についてです。
ねじれの位置は定期試験では頻出ですが、模試や入試ではそこまで頻繁に問われない内容ですので、理解が甘かった人もいたのではないでしょうか。
今回の(11)は選択問題でしたので、知識があやふやでも正解できた人は多かったと思います。
4択なので、運次第でも正解できます。
(16)は標本調査です。
標本調査自体は頻出単元です。
今回ピックアップした理由は、選択問題である代わりにその選択の根拠を記述する問題であったからです。
こうした形の出題は珍しく、単純な選択問題で避けられない”運ゲー”感を薄くする、優れた問題形式だと思います。
今後も継続して単純な選択問題に記述問題を融合した形式の問題が出題される可能性はあると思います。
計算だけ追うのではなく、何故そうなるのかをちゃんと考えていきましょう。
大問2 難易度:易
定番の作図と、定番の合同証明です。
両問題とも易しいですが、特に(1)は非常に易しく絶対に落としてはいけない問題でした。
作図は毎年必ず出題される単元です。
絶対に対策を疎かにしてはいけません。
今年の問題は易しかったので、難しくなった北辰の作図レベルで勉強していた人にとっては拍子抜けしたのではないでしょうか。
垂線を作図すれば正解です。
(2)は定期試験等でもよく見る、平行四辺形の性質を利用した証明です。
直角三角形の合同条件を利用するのが早いです。
遠回りですが一辺両端角でも問題ありません。
来年以降もこのレベルの合同証明が出題されるとは限りませんが、作図と並んで今後、合同(相似)証明は落とせない問題の仲間入りするかもしれません。
学校ワークレベルの証明を大部分おさえておけば、6点確保できます。
大問3 難易度:やや易
相似(少しだけ三平方)の問題です。
河合塾の大学共通テストの模試で影の長さ、山の高さの大問が出題されていました。
「身近なできごとを、学校で学ぶ数学で解決する」の代表が、こういった問題になるんですかね?
埼玉県公立入試ではかつてスカイツリーの高さを計算させる問題が出題されていますね。
(1)は簡単な相似の問題です。
影の問題は相似で解きます。
(2)は目線の高さを考慮する定番の問題です。
問題集等ではよく目にする問題です。
有名な直角三角形の辺の比と二等辺三角形に気付かなければいけません。
両者とも図形問題では口酸っぱく意識するように言われていると思いますが、それでも本番でそれができるかというと難しいかもしれません。
分かってしまえば計算すらいらないような問題ですが、正答率は低いでしょう。
大問4 難易度:やや難
(1)直線の式の決定です。
関数を捨てている人でもここは拾っておきましょう。
一次関数の最低限の勉強は、直線の式の決定とyの変域です。
(2)①文字座標の定番の問題です。
定番とはいえ、文字座標自体に触れてこなかった人も多いと思われます。
やってきた人にとっては楽勝で、やってない人にとっては無理、とハッキリ分かれる問題です。
80点以上を狙う人であれば時間を割いて正解しましょう。
(2)②文字座標の問題です。
ほとんどの受験生にとって難しい問題です。
①を正解したとしても②は厳しいという人が多いでしょう。
同じ文字座標の問題、つまり関数と方程式の知識を問う問題ですが、「すべて」という条件が厄介です。
与えられた図のみ使って考えるのではなく、自分で動点Pを動かして実験しなければ完答はできないでしょう。
よい問題ですが、5点です。
正解しなくて問題ありません。
-学校選択問題-
大問1 難易度:やや難
例年よりやや難しかったのではないでしょうか。
しかし理不尽と言える問題もありませんので、学校選択問題受験者はやはり大問1を生命線とすべきでしょう。
可能な限り得点したい小問集合です。
(2)対称式です。
一昨年も出題されていますので、対策済の人が多かったと思われます。
学校選択者は、文字式の通分をできるようにしておきましょう。
(5)確率です。学力検査1-5と関連。
去年の問題はひどい問題でしたが、今年はだいぶマイルドになりました。
2個のサイコロなので表を使って書き出せば正解できます。
時間を使ってでも確実に正解したい問題です。
(7)円錐の表面積です。学力検査1-13と関連。
学力検査と類似した問題ですが、ほとんど難易度が変わりません。
つまり確実に正解したい問題です。
慣れていれば展開図を書く必要もないですが、側面の扇形の中心角はやはり求められるようにしておくべきだと思います。
(8)資料の問題です。学力検査1-15と関連。
学力検査とは殆ど違う問題になり、難易度が大幅に上がっています。
中央値が7.5または8となることに気付いて、そこから平均値との整合性を考えましょう。
難しいですが、Hは0~10の整数なわけですから時間をかけて総当りすれば何とかなる問題です。
解けるところを解いた後は、大問1の(5)と(8)に時間を割くべきでしょう。
大問2 難易度:標準
(1)作図です。
去年の講評で述べたように、ついに学校選択と学力検査で作図の問題を分けました。
とはいえ難易度は低く、学力検査の作図があまりに簡単であったことを考えると、学力検査を簡単にすることで相対的に難しくしたのかもしれません。
来年度以後は難しい作図が出題されるかもしれませんので、やはり作図は重点的に学習しておくべきです。
(2)図形の証明問題です。学力検査2-2と関連。
昨年に引き続き平行四辺形であることの証明が出題されました。
標準的な問題ですが、平行を述べるための根拠の部分で減点される人は多いかもしれません。
大問3 難易度:やや易
(1)相似の問題です。学力検査3-1と関連。
学力検査とほとんど同じ問題です。
(2)学力検査3-2と関連。
学力検査との違いは、先生が登場せず、図が与えられていないことだけです。
図のない文章題を、自分で図を書いて練習してきた人にとっては難しくないでしょう。
一方でそういった経験がない人にとっては厳しい問題になったと思います。
関数や図形は、極力自分で書いて勉強しなければなりません。
大問4 難易度:標準
学力検査とほとんど同じです。
問題の違いは「点A,Bの座標が書かれているか、x座標のみか」だけです。
配点は学力検査よりも大きいので、(2)①までは正解したいところです。
(2)②の完答は学校選択受験者でも少数派だと思います。
80点以上を狙う人であれば頑張りましょう。
大問5 難易度:やや難~難
(1)立体の体積です。
三平方を利用して高さを求めるだけの問題です。
去年の大問5でもほとんど同じ問題が出題されていますので、必答です。
(2)ねじれの位置です。学力検査1-11に関連。
ねじれの位置にある総本数の問題で、学力検査1-11と関連していますが、難易度は断然高いです。
7本と誤答した人が多かったのではないでしょうか。
四角柱のような分かりやすい図形でない場合、辺の延長も考えなければなりません。
(3)相似の問題です。
上の(2)がヒントになっていますが、(2)でPCがAEと平面をつくることに気が付かなかった人が多いと思いますので、ヒントを有効活用できた人は限られるでしょう。
空間図形は、多くが平面で考えると見通しが良くなります。
難問にぶつかったときは、どの平面で見ればよいか考えるようにしましょう。
難しいので90点以上を狙う人が取り組むべき問題です。
数学は以上です。
それでは失礼します。